1)脂肪抑制画像 MR1における脂肪抑制画像としてはいくつかの方法が知られている。今回の研究ではこのうち2つの方法、すなわちShort Tau inversion Recovery(STIR)法およびChemichal Shift SelectiveSequence(CHESS)法を試み、検討した。対象は手製のファントムと正常ボランティア5名である。ファントムとして空気、水、タンパク質、脂肪、鉄溶液を用い、脂肪抑制効果の程度、アーチファクトの有無を検討した。正常ボランティアでは眼窩を含む矢状断、肝臓を含む横断面を撮像し、やはり脂肪抑制効果の程度、アーチファクトの有無を検討した。STIR法では脂肪以外の組織の信号も低下させてしまい全体の信号が落ちる傾向がある。結果としてSTIR法ではT1を120-140msecに設定することで脂肪抑制効果が大きく、解剖学的構造も明瞭に描出されることがわかった。CHESS法では、1-3-3-1binominal pulseを用いた。脂肪抑制効果はSTIR法より大きく、選択性も高いが、磁化率アーチファクトがでやすかった。 2)TAE後HCCの残存癌細胞の評価における脂肪抑制MRIの有用性 残存HCCの評価には主に造影CT、あるいはGd-DTPAによる造影T1強調像によって行われている。しかし、リピオドールからのアーチファクトによって、CTでは詳細な評価ができず、造影T1強調像ではリピオドールからのアーチファクト発生はないが、CTに比して空間分解能の低下は免れない。ここに脂肪抑制のシークエンスを加えることで撮像範囲内の高信号を抑えることができ、造影効果をもつ残存癌細胞をより明瞭に描出することができる。評価の対象としたTAE後の患者5例のうち2例で残存癌細胞を確認できた。
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