研究概要 |
本研究では、脳内神経伝達物質である,精神疾患との関連が強いドーパミンの生合成前駆体であるドーパに着目し,6-[^<123>I]-L-DOPA(^<123>I-DOPA)の脳のドーパ代謝機能診断薬としての有用性を検討し,以下の成果を得た. 1.ドーパの放射性ヨウ素標識は,6-位水銀誘導体を標識原料に用いることにより,簡便に,短時間に終了した.標識体の放射化学的純度は高く,高収率かつ無担体状態(高比放射能)で得られた. 2.マウス体内分布実験において,^<125>I-DOPAは,脳へ速やかに高く集積した.一方,血液からの消失は速く,再分布などは見いだされなかった.また,投与後速やかに,尿中に排泄された. 3.^<123>I-DOPAの分配係数は低く,脂溶性によって脳内に移行していないことが確かめられた.また,脳内pHと血液pHにおいて,分配係数の違いが観察されなかったことより,pH-shift機構の関与も否定された. 4.^<125>I-DOPAは,ラット脳切片へも高く集積し,低温浸盪やウワバインの存在により集積が阻害されることから,エネルギー依存性能動輸送機構によって脳細胞内に移行していることが示された.更に,L-DOPA負荷によりその集積が低下するものの,D-DOPAでは影響が見いだされず,L-体特異的輸送機構であることが確かめられた. 5.^<125>I-DOPA投与後のマウス脳に集積した放射能は,大部分が遊離のアミノ酸として存在し,タンパク画分や低分子代謝物画分にほとんど検出されなかった.特に,放射性ヨウ素標識化合物を用いる際に最も問題となる脱ヨウ素化反応に関しては,脳を初めとするどの組織においても高い抵抗性が観察された. 以上の結果より,^<123>I-DOPAの脳への集積は,アミノ酸膜能動輸送機構のみを反映していることが明らかとなった.従って,^<123>I-DOPAは脳のドーパ膜輸送機能を選択的に測定し得る放射性診断薬として優れた性質を有する.
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