ラットにメトアンフェタミン(MAP)を1日2回、1回量1.25、2.5、3.75、5mg/kgと順次増量し、隔日で皮下投与することによって慢性覚醒剤中毒モデルを作成し、以下の項目について対照群(生食投与)と比較した。 1.1週間の休薬期間の後、慢性覚醒剤中毒モデルラットに恐怖条件付けストレス(CFS)を負荷したところ、CFSによって惹起されるすくみ行動(ラットでは不安、恐怖の指標とされる)が有意に増強して出現した。この結果はMAP反復投与が恐怖条件付けの獲得過程を増強したことを示している。なお、恐怖条件付けストレスは、ショック箱内でラットにフットショック(1日1回2日間)を与え、最終ショックの24時間後に再び、ラットをショック箱におくことによって行った。 2.ドーパミンD1受容体アンタゴニスト、D2受容体アンタゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、ドーパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤などの薬物をMAPの前処置として併用反復投与し、これらの薬物がMAP反復投与による不安の増強を阻止できるかについて検討した。その結果、MAP反復投与によるfreezingの増強は、D2/3/4受容体アンタゴニストであるnemonapride(1mg/kg)の併用反復投与により抑制されることが明らかとなった。一方、D2/3受容体アンタゴニストであるreclopride(3mg/kg)の併用反復投与は不安の増強を阻止しなかったことから、nemonaprideの奏効機序にD4受容体が関与している可能性が示唆された。 3.恐怖条件付けした直後(2日間フットショックを加えた直後)に断頭により脳を取りだし、内側前頭前野、側坐核、線条体、扁桃体、海馬におけるモノアミンおよびその代謝物の脳内濃度を電気化学検出器付き高速液体クロマトグラフィーで測定した。その結果、慢性覚醒剤中毒モデルラットでは対照群と比べて、恐怖条件付けに対するドーパミン系の反応は大きいが、セロトニン系はむしろ低反応であることが明らかとなった。
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