研究概要 |
アルツハイマー病(AD)脳には、アミロイドβ蛋白(Aβ)の沈着によって生じる老人斑、血管アミロイドなどの病変がみられる。やがて神経原線維変化(NFT)が形成され、ついには神経細胞死にいたるとされている。一方、脂質関連の蛋白として知られるアポリポプロテインE(apoE)はAβ沈着、NFTという2つの特徴的な異常沈着構造物に存在することが明らかとなた。さらにapoEの主要な3つの遺伝子型(ε2,ε3,ε4)がADの発病に関して、ε4は促進的に、ε2は防御的に働くことが明らかにされてきている。本研究においてはapoEの3つのフェノタイプに注目して、Aβの前駆体蛋白であるAPPの代謝、分解処理過程に及ぼす影響を検討した。 神経系由来の細胞株をそれぞれ培養した。フェノタイプの異なるapoEをそれぞれ患者血清から精製して培養系に加え、APPのmRNA、蛋白の発現量を調べ、APPの断片の性質を検討した。さらに細胞内小器官の分画を行ない、細胞内のAPP分解処理過程の変化について検討した。細胞の各分画、特にライソゾーム分画においてAPP断片が認められた。apoEの各フェノタイプにより相違が見られた。しかし通常の培養条件下ではAβを含むamyloidogeneticなAPP断片の発現量は、apoEのフェノタイプによる変化を検討するには十分といえず半定量的な分析に留まった。ライソゾーム酵素活性を阻害することによりAPP断片がより明瞭となることが知られており、こうした条件下で検討する必要がある。また培養細胞へのε4遺伝子のトランスフェクションによるapoE4(ε4)の過剰発現、及びジーンターゲッティング法による細胞のapoE発現抑制という条件下での、APPの発現および分解処理過程の変化について引きつづき検討を行っている。
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