ラットにプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)を脳内投与して、扁桃核キンドリングへの影響を検討した。 <方法>実験には、9週齢(270-320g)の正常無処置のSprague-Dawley系雄性ラット14匹(ロイペプチン投与群5匹、対照群9匹)を用いた。ペントバルビタール麻酔下で右側脳室内にガイドカニューラを留置し、また、双極深部電極を右扁桃核に刺入した。手術の2-3日後から、10.0μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した500μgのロイペプチンを右側脳室内に1日1回、連続4日間注入した。対照群には、溶媒であるPBSのみ10.0μlを同様の方法で注入した。ロイペプチン最終投与の2日後から、両群に対して右扁桃核を後発射(AD)閾値の電流強度を用いて60Hz、pulse幅、 lmsecの二相性矩形波で1秒間、1日1回電気刺激した。発作症状はRacineに従って5段階に分類し。stage5が連続3回出現した時点でキンドリングを終了した。<結果>Stage1-5の出現に要する平均刺激回数は、PBSのみを投与した対照群ではそれぞれ5.4、10.9、15.7、16.4および18.0回であったのに対して、実験群ではそれぞれ2.0、6.4、7.7、7.8および11.2回であり、実験群ではキンドリング形成が促進していた。(stage2-5では有意差が認められた)。ADの持続時間には両群間に有意差は認められなかった。<結語>ロイペプチンのラット脳室内投与は、今回我々がキンドリングを施行した時期(ロイペプチン最終投与後2-19日)においてはけいれん準備性を高めると考えられる。ロイペプチンのラット脳室内投与により、リポフスチン様dense bodyの蓄積や神経突起の変性などの老化類似の神経病理学的変化が脳に広範に出現することが知られており、本研究の結果は、実験的老化促進動物においてけいれんが出現するメカニズンムを考えるうえで興味深い。
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