痴呆、人格変化のめだった神経ベーチェットの5例(うち1剖検例をふくむ)について、臨床症状、MRI、SPECT、神経病理所見について検討した。人格変化としては、多幸、脱抑制、子供っぽさなどがめだち、病気の進行と共に次第に発動性減退がめだつようになった。これらの症状は前頭葉障害による症状と類似していた。またしばしば感情失禁も見られた。痴呆は、短期記憶障害がめだち、判断の障害や計算障害などもみられた。MRIでは全例で橋、中脳を中心とした脳幹部にT2強調画像で高信号域として描出される病変が散見され、病状の進行に伴い、同部位の萎縮もめだつようになった。大脳皮質の萎縮はめだつ例とめだたない例があった。SPECTでは全例で、大脳皮質とくに前頭葉と側頭葉にめだつ血流の低下を認め、これらの血流低下は人格変化や痴呆の進行と共にめだつようになった。1剖検例の検討では、血管周囲腔に炎症性細胞浸潤を伴う比較的新しい壊死病巣も、すでに嚢胞化した陳旧性病巣もみられたが、病巣はやはり中脳、橋を中心に分布していた。大脳皮脂では、海馬に多く見られ、他の部位にも散見されたが、前頭葉皮質にはみられなかった。この例ではSPECTで前頭葉と側頭葉の血流低下がみられたが、MRIでは同部位に萎縮はみられなかった。5例のSPECTの検討から、神経ベーチェットの痴呆や人格変化には前頭葉や側頭葉の機能の低下が強く関与している可能性が示唆された。いっぽう、MRIや神経病理所見から、大脳皮質の機能障害は、大脳皮質にも病変が及び出現することのほかに、脳幹部の病変により2次的に大脳皮質の障害が出現する可能性が考えられた。今後も症例数を増やし、引き続き検討していきたい。
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