研究概要 |
希死念慮を伴う重症うつ病や薬物抵抗性うつ病に対して、古典的な治療法である電気けいれん療法は著効を示すことが多いが、その作用メカニズムについては不明である。今までにわれわれは、電気けいれん療法の反復処置をラットに行ない、以下のような結果を得た。 1)電気けいれん療法の反復処置は脳内セロトニンとセロトニン代謝産物の濃度を増加させる。 2)電気けいれん療法の反復処置は海馬のセロトニン1A受容体数と前大脳皮質のセロトニン2受容体数を増加させ、セロトニン1A受容体関連行動とセロトニン2受容体関連行動も増強する。今回、電気けいれん療法のセロトニン取り込み部位に及ぼす影響を検討した。 【方法と結果】 100V、60Hz、1秒間の電撃を1日1回、抗うつ薬であるイミプラミン(10mg/kg,i.p.)を1日1回14日間処置し、24時間後に断頭して前大脳皮質と海馬を得た。電気けいれん療法については1回処置の影響も検討した。実験には[^3H]paroxetineを用いて、セロトニン取り込み部位を測定した。 電気けいれん療法の反復処置は前大脳皮質において、セロトニン取り込み部位を増加させたが、海馬では変化がみられなかった。電気けいれん療法の1回処置においても前大脳皮質において、セロトニン取り込み部位が増加していた。一方、抗うつ薬の反復処置では2つの部位において変化がみられなかった。 【まとめ】 以上の結果から、電気けいれん療法は1回の処置で前大脳皮質のセロトニン取り込み部位を増加させ、この急性効果が持続することが明らかになった。こういった変化が電気けいれん療法の薬物抵抗性うつ病に対する効果と関係しているものと考えられた。
|