実験にはラットを用いた。ペントバルビタール麻酔下、脳定位固定装置を用いてラット線条体にマイクロダイアリーシス用のガイドカニューレを挿入固定する。ガイドカニューレ固定後1-2日後よりダイアリーシス用のプローブ(自作、直管型)を線条体に刺入しリンガー液の潅流を開始する。潅流にはマイクロインフュージョンポンプを用いて一定の流速をもって、無麻酔無拘束の条件下で行う。サンプルは20分間隔で連続的に回収し、電気化学的検出機付きの高速液体クロマトグラフ(HPLC-ECD)にサンプルを注入し、ドーパミン(DA)の定量を行った。定常状態測定のためのサンプル回収後、N-methyl-D-aspartate(NMDA)局所投与に対する線条体DAの変化を観察する。また、これらの薬物と同時に、あるいは単独でNO合成阻害剤であるnitro-arginine(L-NNA、D-NNA)を投与した際のDA活性への影響も観察した。 NMDA(1-10mM)は用量依存的に線条体細胞外液中のDA濃度を上昇させた。また、そのDA増加はMK-801(NMDAレセプターの選択的アンタゴニスト)により抑制され、NMDAレセプターを介しての変化であることが確認された。L-NNA(500μM)は、DA濃度に有意な変化を与えなかったが、NMDAによるDA増加を抑制した。L-NNAの不活性型の異性体であるD-NNAには、この抑制作用は認められなかった。これらの結果より、NMDAレセプター刺激によって誘発される線条体DA遊離に対して、NOは促進的に機能的関与している可能性が示唆された。
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