研究概要 |
対象は,抗精神病薬による治療中の慢性のDSM-III-Rの診断基準に適合する精神分裂病者10名および性と年齢をマッチさせた10名の正常対照者である。対象者に対して静磁場強度2.0テスラのMR装置を用いてproton MRS(STEAM法,VOI2cm×2cm×2cm)を施行した。また,MRIはFLASH 3D法で全脳の1mm厚の画像を得た。脳研式記銘力検査は臨床心理士が施行した。 分裂病群では正常群と比較してN-acetylaspartate(NAA)/choline(Cho),NAA/creatine(Cr)比は減少し,また,Cho/Cr比は増加していた。これらの比と精神症状の評価点,抗精神病薬および抗パーキンソン薬の一日投与量の間には有意な相関は認められなかった。VOI中の灰白質と白質の体積は両群間で有意差は認められなかった。また,MRSのパラメーターと灰白質や白質の体積の間にも有意な相関は認められなかった。脳研式記銘力検査は分裂病群において有意に低下していたが,MRSのパラメーターとの間には有意な相関は認められなかった。 Proton MRSによって検出される分裂病者の内側側頭葉における物質レベルの異常は,単に形態的異常を反映するものでもなく,また,記銘力障害とも直接的には関連性がないと考えられる。
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