Elマウスは自然発症てんかんモデルであり、いままでに、神経伝達物質の異常、mRNAの代謝異常が研究されているが、その病因を指摘するまでには至ってない。既に、Elマウス固有の痙攣発作によって、polyadenylationの低下、ポリ(A)ポリメラーゼ活性の低下が惹き起こされて転写後のmRNAによる蛋白合成が低下することを報告した。そこで次に、このポリ(A)ポリメラーゼのリン酸化の程度を知るために、抗体カラムクロマトグラフィーを用いて精製することを試みた。E.coliから精製されたポリ(A)ポリメラーゼの抗体を日本家兎にて作成し、Elマウス脳からゲルクロマトグラフィーで精製した酵素標品との交叉反応を示す抗体を免疫拡散法にて探したが、発見することはできなかった。次にポリ(A)セファロースアフィニティーカラムで脳の酵素をもう一段階精製して、免疫拡散法をおこなったがやはり交叉反応は見られなかった。E.coliの酵素の抗体では交叉しない可能性が考えられるため、ポリ(A)ポリメラーゼのcDNAを他研究所から入手し、mRNAを先に精製する方針に変更して、現在は検討している。酵素のリン酸化に対しては、抗体は利用できなかったが、新たにポリ(A)セファロースカラムを以前に利用した4種のカラムにくわえて用い、酵素の粗抽出液に活性Pを加え、精製したところ、痙攣後のElマウス脳の標品が発作間歇期のものよりも、リン活性が低いという結果がでた。完全に精製できたわけではないのではっきりと酵素のリン酸化の低下を指摘はできないが、酵素活性にリン酸化が関係する可能性は高いと考えられる。今後は、特に活性の低下している生後14日齢のElマウス脳とddYマウス脳についてリン酸化の比較検討を行いたいと考えている。
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