研究概要 |
今年度は,アルツハイマー型痴呆(ATD)脳において異常沈着しているアミロイドの由来を血管との関連で検索した。順天堂大学付属病院ならびにその関連病院で剖検となったATD脳を,半球はホルマリン固定としてATDの病理学的な確定診断を行い、残りの半球を血管構成要素の免疫組織化学的検索に用いた。固定されたブロックを切り出し,老人斑アミロイド沈着に対しては,各種銀染色,抗β/A4蛋白抗体などを用い確認した。また血管系との関連の確認としては血管内皮細胞の分布に対して抗FactorVIII抗体を用いた。また血管由来とされる物質については肝細胞でのみ産生されるC-reactive protein(CRP)とAmyloid P componentの分布の検索を用いて二重免疫染色を行い、これを光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を用いてこれらの物質の相互配列を詳細に検討した。結果として、血管との関連については抗FactorVIII抗体で認識される血管内皮細胞の周囲を取り囲むように,β/A4蛋白が分布している構造が多く確認された。もちろん従来から指摘されているように全く血管構造を認めない老人斑も存在していたが、血管が存在する場合はほとんどがアミロイド沈着の中心部に存在していた。また血管由来物質についても、CRPがギ酸処理をしたATD脳切片において一部の老人斑で認められ、またAmyloid Pについては老人斑のβ/A4蛋白とその分布が一致した。老人斑と血管系の関連については従来より指摘されているものの未だ確立されていないが、今回の研究では血管構造は老人斑の中心部に存在している場合が多く、また老人斑を構成している物質の中には血管由来としか考えられないものも存在していることを示しており、老人斑形成に血管系が重要な役割を果たしていることを強く示唆するものである。今後はこれらの血管由来物質などの血中濃度などとも比較し、ATD脳における血管系の果たす役割について詳細に検討して行きたい。
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