研究概要 |
現在まで定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の相違については主としてドーパミン受容体との関連から考えられてきた。すなわち、定型抗精神病薬はD2受容体に、非定型抗精神病薬はD4受容体に選択的に作用するとされている。今回の目的であるIn Situ hybridization法による抗精神病薬の脳内G蛋白mRNAに及ぼす影響について検討するために、その前段階としてノーザンプロット法を用いて、ラットに定型抗精神病薬であるハロペリドールの急性投与を行い、G蛋白と同様、シナプスにおける情報伝達に大きな役割を果たしているNMDA受容体のmRNAの変化について検討した。NMDA受容体はグルタミン酸受容体を構成する主要なサブタイプの一つであり、ハロペリドールおよび対照として生理食塩水を投与したWistar系ラットの全脳を2時間後に断頭して脳を取り出し、全脳をホモジェナイズしてtotal-RNAを抽出。NMDAR1,R2A、R2B、R2Cそれぞれの合成ヌクレオチドプローブを^<32>Pで標識、ノーザンブロット法によって各サブユニットのm-RNAを検出し定量化した。その結果、NMDAR2Bではハロペリドール急性投与によりm-RNAの発現量が減少した。しかし、NMDAR1,R2A,R2Cでは変化を認めなかった。既にハロペリドール投与によりドーパミンD2受容体m-RNAが増加することが報告されているが、今回の結果から、ハロペリドールは急性投与においては、NMDA型受容体のうちでも主にNMDAR2Bに作用して効果を発現する可能性が示唆された。以上の結果について、第24回日本神経精神薬理学会年会(1994.10.20-21)にて報告した。今後、脳内における詳細な変化を観察するためにIn Situ hybridization法を用いて抗精神病薬の脳内G蛋白、NMDA受容体に及ぼす影響について検討する。
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