抗精神病薬の長期服用に伴う副作用である遅発性ジスキネジアに対するcAMP phosphodiesterase(PDE)阻害剤の治療効果についてラットを用いて検討した。遅発性ジスキネジアモデルラットは、1)21日間ハロペリドール1.5mg/kg毎日i.p.投与、及び2)6ケ月間ハロペリドール・デカネート25mg/kg1回4週i.m.投与、の2種類を作成し検討した。また、遅発性ジスキネジアの口周囲の異常運動の中の"chewing movement"と"tongue protrusion"を指標に評価した。いづれのモデルにおいても、対照群に比べ有意にそれらの運動は増加しており、これらのモデルの妥当性を示した。遅発性ジスキネジア発現において重要な脳部位と考えられる線条体のドーパミンD2受容体はモデル群において有意に上昇していたが、ドーパミンD1受容体は変化を認めなかった。このことより、2つのドーパミン受容体のバランスがD2優位に片寄っており、それらで調節される二次神経伝達物質であるcAMPの調節に影響が及ぶことが示唆される。特にcAMPの合成抑制が考えられた。cAMP PDE阻害剤であるロリプラムは用量依存的にこれらの異常運動を抑制した。これらのことより、遅発性ジスキネジアは抗精神病薬の長期服用により生じたドーパミンD1とD2受容体のバランスの異常により生じ、cAMPを増加させることにより、それを改善し、治療効果をもたらすことが強く示唆された。
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