研究概要 |
我々は、細胞性粘菌の柄細胞分化誘導因子(DIF)が、哺乳類腫瘍細胞に対して作用を持つことを見いだし研究を進めてきた。そして、(1)DIFが、マウスおよびヒトの赤芽球性白血病細胞の再分化(ヘモグロビン産生)を誘導すること(Asahi et al.1995.BBRC)、(2)DIFが、ラット膵線房由来腫瘍細胞(AR42J)およびヒト白血病細胞(HEL)の細胞内カルシウム濃度を上昇させ、細胞分裂を阻害すること(Kubohara et al.1995.FEBS Lett.)、(3)高濃度のDIFが、AR42J細胞の細胞死(apoptosis)を引き起こすこと(Kubohara et al.投稿中)、(4)さらにDIFは、初代培養可能な正常細胞の1つである脳軟膜細胞の増殖は阻害するが、細胞死を引き起こさないこと(投稿準備中)を見いだした。これらの結果は、「DIFがある種のガン細胞を正常細胞に細分化させる」こと、「DIFがガン細胞のみを選択的に殺す可能性がある」ことを示しており、将来DIFは抗癌剤として利用できる可能性が出てきた。 また我々は、細胞性粘菌におけるDIFの作用の解析を行い、DIFが細胞内カルシウムとプロトン濃度を上昇させることにより柄細胞分化を誘導することを示唆した(Kubohara and Okamoto,1994.FASEB J.)。 さらに我々は、細胞性粘菌を利用したbioassay系を利用して、哺乳類由来のDIF様因子の単離を進めているが、現在までのところそのような生理活性因子は見つかっていない。
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