研究概要 |
エストロゲンは、女性ホルモンとして性分化、性機能の調節に必須であるばかりでなく、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの癌の病因、予後、治療に深く関わっているが、これらの癌細胞におけるエストロゲンの作用機序については不明な点が多い。特に、エストロゲンに直接応答する遺伝子についてはpS2など少数しか知られておらず、より多くのエストロゲン応答遺伝子を知る必要がある。このために、我々は、最近、新しいエストロゲン応答遺伝子efpを同定したが、これは、独特な構造から転写因子であり、また、新しい癌遺伝子として働くことが示唆された。 I.efpの染色体位置の決定 最近、乳癌や前立腺癌においても染色体異常が報告され、たとえば乳癌では17qなどの、いくつかの特定の場所に高頻度に起こることがわかっている。efpの染色体位置は17q23.1に決定された。これは遺伝性の早発性乳癌の原因遺伝子といわれるBRCA1の場所に近く、また散発性の乳癌でもよく欠失している領域であり、その発癌との関係が興味が持たれる。(Inoue,S.et al,Genomics,in press) 2.癌組織におけるefp遺伝子異常および発現異常の検索 乳癌癌組織において、efp遺伝子の発現をRNAレベルおよび蛋白レベルで確認した。その発現量と癌の病態の関係について検討中である。(原稿準備中) 3.癌細胞におけるefpと細胞増殖との関連 遺伝子工学的手法を用いて、エストロゲン応答癌細胞にefpを正方向もしくは逆方向に発現させることによりおきる増殖への影響を調べための細胞を作成した。 以上の研究から、エストロゲン応答癌に対するエストロゲンの作用におけるefpの関与が示唆され、さらに検討を加えるための材料が整った。
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