(1)トランスフェクションによる変異受容体発現細胞株の作製 Leu193、Asp1048、Asp1179の変異インスリン受容体をラット1線維芽細胞に発現させ、クローニングにより細胞株を得た。このうちLeu193とAsp1179の変異受容体の解析を行いそれぞれ報告した(論文1、2)。Asp1179細胞はインスリン受容体が十分に膜に発現せず、この変異受容体の異常の解析のみでハイブリッド作製実験は行わなかった。Leu193変異受容体は受容体生合成の過程の障害は認められたが成熟した変異受容体の機能は正常であった。現在、Asp1048変異受容体を発現させた細胞でwild型の受容体を複合発現した細胞を作製中である。 (2)細胞でのインスリン、IGF-1作用の検討 変異インスリン受容体とwild型のIGF-1受容体のハイブリッドが形成されているAsp1048細胞での作用が検討できた。インスリン作用はAsp1048細胞では認められなかった。ラット1細胞、Asp1048細胞へのIGF-1結合には差を認めなかったが、Asp1048細胞ではIGF-1によるチミジン取り込みがRat1細胞の約30%に低下していた。同様にIGF-1刺激によるアミノ酸の取り込みも抑制されたが、グルコースからのグリコーゲンへの取り込みは正常であった。IGF-1受容体のin vivoでの自己リン酸化は正常だったが、Glu:Tyrを用いたin vi+voのキナーゼ活性は30%以下に低下していた.IGF-1刺激によるIRS-Iのチロシンリン酸化には差を認めなかった。MAPキナーゼ活性もAsp1048細胞で有意な低下を認めた.このようにインスリン受容体異常症で認めたキナーゼ変異受容体Asp1048は正常IGF-1受容体を介する作用を増殖作用特異的に抑制するdominant negative効果を示した。
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