本研究はGLUT4-containing vesiclesに存在するMAP kinaseの基質を同定し、それらのインスリンによるGLUT4のtrans locationで果たす役割及びその調節機構を解明することを目的とした。特に、exocytosisに関与するとされる低分子量GTP結合蛋白、Rab3Dの、MAP KinaseやGLUT4-containing vesiclesとの関係について検討した。3T3-L1脂肪細胞では、抗Rab3D抗体によるimmunoblottingにて25及び28kDaの蛋白を特異的に認識した。細胞膜分画では28kDaの、細胞内膜分画では25及び28kDaの、細胞質では25kDaの蛋白が検出されたが、どの分画でもインスリンによる量の変化は検出されなかった。GLUT4-containing vesiclesではRab3Dは検出できなかった。この抗体はGTP結合能を持つ28kDaの蛋白を免疫沈降するが、この蛋白はin vitroでMAP kinaseにより酸化された。しかし、^<32>P正リン酸で細胞ラベルして行った検討では、インスリン非刺激でもRab3Dはリン酸化されており、シンスリンによるリン酸化状態の変化は検出できず、さらに、3T3-L1脂肪細胞をインスリン処理して脱リン酸化を阻害する条件で抗Rab3D抗体による免疫沈降を行い、in vitroでMAP kinaseによる免疫沈降物のリン酸化を検討したが、28kDaの蛋白のMAP Kinaseによるリン酸化の程度には差異は見られなかった。以上より、1、インスリンによりその局在は変化しない。2、Rab3Dは、細胞内peoolのGLUT4-containing vesicleには少なくとも強固には会合しない。3、Rab3Dは、in vitroではMAP kinaseの基質となるが、in vivoではインスリンによりそのリン酸化状態は大きくは変化しない、と考えられた。現在、構成的活性化を受けたMAP kinase kinaseをレトロウィルスベクターを用いて3T3-L1脂肪細胞に導入し、糖輸送におけるMAP kinaseの役割を検討中である。
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