膵ラ氏島アミロイドペプチド(IAPP)(islet amyloid polypeptide/amylin)は、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)およびインスリノーマ症例の膵アミロイドの主要な構成成分として単離されたペプチドで、病理学的存在様式から、NIDDMの病因に関与しているペプチドとして注目されている。しかし、その生理的、臨床的意義の詳細に関しては不明な点が多い。本研究はIAPPの細胞内分布ならびに生理機能の解明を行うことを主目的とした。 本研究者らは、IAPPに特異的なRIAを開発し、それを用いてヒト、囓歯類の正常膵臓からIAPPを単離し構造決定した。その結果、IAPPは37個のアミノ酸からなりC末端がアミド化されたペプチドでCGRPと高い相同性をもちcalcitonin/CGRP familyに属することを明らかにした。さらに、CGRPが中枢、自律、感覚等の神経系に存在する神経ペプチドあるのと異なり、IAPPは神経系には全く見だされず、膵臓、胃、上部消火管に広く分布していることを明らかにした。また、ヒトの各種病態生理下における合成、分泌の変動を明らかにし、IAPPが膵臓B細胞分泌顆粒中にインスリンと共存し、かつ共に分泌される膵ホルモンであることを証明した。 IAPPの膜受容体の存在の確認のため、膵臓ラ氏島B細胞膜成分と^<125>I-IAPPの結合実験を行い、さらに組織切片上でautoradiographyを行いBAS 3000にて画像解析を行なっているが、まだ充分な結果が得られていない。この実験系の開発にあたり用いた手技は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の膜受容体のbinding assay系の確立に非常に有用で、培養細胞でしか報告のなかったbFGFの膜受容体がin vivoの細胞で存在することを蛋白レベルで初めて明らかにすることができた。
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