本年度の実績としてこの研究に関係する二つの論文が掲載されたことを挙げることができる。そのひとつは、研究計画調書で述べたマウス骨髄ストローマ細胞(ST2)と骨髄由来マクロファージ前駆細胞との共存培養による破骨細胞分化誘導系の確立に関する論文で、その中で分化誘導された破骨細胞を細菌由来のコラ-ゲナーゼを用いて純化する方法についても述べている。もうひとつは、上記の系を用いて分化誘導された破骨細胞にインターロイキン4の受容体が存在し、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇反応が認められ、しかもこの反応が細胞膜に存在する膜電位依存性カルシウムチャンネルを介することを明らかにしたものである。したがって、骨代謝研究とくに破骨細胞の研究においてこの分化誘導系の有用性が証明され、さらに破骨細胞に対してある種のサイトカインが直接作用しうることを示したものと考察される。 研究成果としては、この分離破骨細胞にIL-1α、IL-1β、TNF-α、TGF-β、IL-1receptor antagonist、osteopontin、IL-6、IL-4receptorが発現していることをReverse transcriptionpolymerase chain reaction(RT-PCR)により確認した。このことから、破骨細胞が種々のサイトカインを産生することおよび種々のサイトカインに反応しうることを示唆するものと考えられる。 また、破骨細胞に直接作用しうるカルシトニンが用量依存的にTNF-αの発現を増加させることをNorthern blot解析により確認した。また、PTHrPのC末端ペプチドとされているオステオスタチンもまたTNF-αの発現を増加させることを見い出したが、現段階では用量依存性は確認できていない。以上より、破骨細胞の不活化によりマクロファージの形質発現が促進される可能性が示唆される。さらに、TNF-αが骨芽細胞に対して抑制的に働くことを考えあわせると、破骨細胞による骨吸収を抑制することは骨吸収から骨形成へのカップリングを抑制する可能性がある。この点につき、今後骨芽細胞の遊走能に対する破骨細胞が産生するサイトカインの影響を検討したいと考えている。
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