研究概要 |
バセドウ病眼症は自己免疫性疾患と考えられているが、未だ自己抗原は同定されていないし、高率にハセドウ病に合併する機序も明らかではない。最近thyrotropin receptor(TSH-R)の分子レベルでの研究が進み、私どもを含めて幾つかの施設よりRT-PCR法にて後眼窩組織におけるTSH-R mRNAの発現が報告され、バセドウ病眼症との関わりが注目されている。今回私どもはin situ hybridization法によりヒト後眼窩組織におけるTSH-R mRNAの発現の局在とその意義について検討した。 対象と方法:バセドウ病眼症患者7例とコントロールの3例より得られた外眼筋組織および後眼窩脂肪組織由来の培養線維芽細胞を対象とした。TSH-R cDNAより30 Merの合成ペプチドを3'-endolabeling法にてdigoxigeninをラベルし、プローブとして用いた。 結果:バセドウ病眼症患者7例中5例に外眼筋組織間質細胞にTSH-R mRNAの発現がみられた。正常コントロールにも3例中1例にTSH-R mRNAの発現がみられた。バセドウ病眼症患者の後眼窩脂肪組織由来の培養線維芽細胞での検討では線維芽細胞のcytoplasmに発現がみられた。 結論:以上の結果より、バセドウ病眼症患者では後眼窩組織の線維芽細胞上に発現したTSH-Rが自己抗原となりTSH-R抗体の標的となっている可能性が示唆された。 図 眼症患者の後眼窩組織におけるTSH-R mRNAの発現(in situ hybridization法) A:外眼筋組織(anti-sense probe), B:外眼筋組織(sense probe) C:線維芽細胞(anti-sense probe), D:線維芽細胞(sense probe)
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