94年度の研究により、III型高脂血症患者から新しいアポ蛋白E2変異を発見し、その遺伝子変異を明らかにした。 等電点電気泳動よるアポ蛋白Eの相対電荷の判定(phenotype)と、制限酵素HhaIによるアポE遺伝子型の判定(gonetype)を組み合わせたスクリーニングにより、III型高脂血症を起こすアポE2変異体を発見した。この患者のアポE遺伝子の4つのエクソンとエクソン-イントロン接合部の全塩基配列を決定し、患者の第4エクソンの187番目のコドンに一塩基置換(C→G)を同定した。このE2変異体では、299個のアミノ酸からなるアポEの187番目のアミノ酸がGIn(CAG)からGIu(GAG)へと変化していることが明らかになった。現在までにIII型高脂血症に関与するE2変異体は3例しか報告されておらず、本変異は世界で4番目の報告であり、E2_<Toranomon>と命名した。 E2_<Toranomon>変異により制限酵素MboIIの認識配列が新たに生じるため、この領域をPCR法で増幅し、MboIIの制限酵素多型を用いたE2_<Toranomon>変異のスクリーニングが可能であった。この方法で患者家系を分析したところ、患者はヘテロ接合体E2/E2_<Toranomon>で、3人の子供のうち娘が患者からE2/E2_<Toranomon>を受け継いでE3/E2_<Toranomon>となっていた。この娘の血清脂質は正常であるので、E2_<Toranomon>はE2/E2_<Toranomon>の複合ヘテロ接合体となってはじめてIII型高脂血症を起こすと考えられた。 以上の成果は、一部を1994年度日本動脈硬化学会冬季大会で発表し、現在欧文誌へ投稿準備中である。
|