研究概要 |
造血幹細胞が骨髄にホ-ミングする際にマンノースなどの糖鎖が関与している可能性が示唆されている。マンノースレセプター(以下MRと略す)がこのホ-ミングに関与しているかどうか検討した。骨髄間質細胞は正常骨髄をステロイド存在下に長期培養し樹立した。造血細胞としてヒト白血病細胞株(K562,HL60,U937)を用いた。マンナン(マンノースレセプターの阻害剤)存在下に両者の共培養を行ったが、非存在下に比較して白血病細胞の接着に差はみられなかった。この実験の過程で、無血清条件下ではアポトーシスをおこして死んでいく白血病細胞が、間質細胞と接着した状態では無血清条件下でも生存し、増殖できることを見いだした。間質細胞の培養上清と、共培養した培養上清の存在下で白血病細胞をそれぞれ浮遊培養すると、後者でのみ細胞の生存が可能であったことから、間質細胞は構成的にではなく、誘導的に液性の増殖因子を産生していることが示唆された。白血病細胞はG-CSF,GM-CSF,IL-3などの増殖因子単独存在下では生存増殖できないことから、間質細胞から誘導される因子はこれら以外のものと考えられる。しかしこの培養上清では間質細胞との共培養ほど白血病細胞の生存増殖を支援できないことから、直接の接着によるシグナル伝達の関与が大きいと考えられた。現在種々の接着分子に対する抗体を用いてこのシグナル伝達の同定を行っている。またレセプタータイプのチロシンキナーゼの関与も考え、SCF,fmsについても検討中である。 上記の白血病細胞と骨髄間質細胞との相互作用は臨床的には抗癌剤の感受性、多剤耐性との関係からも重要と考えられ、今後解明してゆく予定である。
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