血液細胞の分化に伴う細胞周期調節遺伝子cdc2の発現の変化とその調節機構につき検討し、以下に示すような結果を得た。 (1)cdc2mRNAは未分化骨髄細胞においては強く発現しているが、分化と共に発現は抑制され、終末分化細胞である顆粒球、単球、リンパ球では陰性であった。 (2)血液細胞におけるcdc2mRNA発現の変化に際し、DNaseI高感受性領域の出現やメチル化状態の変動などクロマチン構造の変化はみられなかった。 (3)cdc2遺伝子のプロモーター領域には転写因子E2Fの結合配列がみられ、血液細胞の分化に伴いその部位へのE2F結合の抑制が観察された。他の転写制御因子の関与を示唆する結果は得られなかった。 (4)51例の症例由来の新鮮白血病細胞におけるcdc2mRNAの発現を調べると、21例(41%)に陽性であった。正常骨髄細胞に比し4〜8倍のmRNA発現の増加を認めるものが10例にみられ、そのうち3例では遺伝子増幅が観察された。 以上より、血液細胞の分化にはcdc2の発現停止が必要で、白血病の一部ではcdc2の異常発現がその病態に関与している可能性が推察された。また分化に伴うcdc2発現の調節に転写因子E2Fが重要な役割を担っていることが明らかになった。
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