研究概要 |
本年度は、アンチセンスDNAを導入する予備実験として、RARα,RXRα,PML遺伝子に対するアンチセンスオリゴDNAを用いた転写阻害実験を行った。RARα,RXRα,PML各遺伝子の読みとり開始配列を含むアンチセンスオリゴDNA(AS-DNA)を、DNA合成機を用いて合成した。正常人骨髄単核球からAIS Microcellecterを用いてCD34陽性細胞を分離し、AS-DNA-20μM存在下で8時間培養した。これをメチルセルロース半固形培地にまき、G-CSF,IL-3,erythropoietin,存在下でのコロニー形成を検討した。RXRα,PML遺伝子に対するAS-DNAはコロニー形成に影響を与えなかったが、RARα遺伝子に対するAS-DNAはコロニー形成を著明に抑制した。コントロールとしてRARα遺伝子に対するセンスオリゴDNAを用いて同様の実験を行ったが、コロニー形成は抑制されなかった。現在、実験の追試を行うとともに、AS-DNAの濃度を変化させることによりコロニー形成の抑制が濃度依存的であるか否かを確認する予定である。 RARα遺伝子の個体発生における役割については、2つのグループがRARα gene targeting mouseを作成し、解析している。これらのマウスでは個体発生はほぼ正常であり、造血系にも異常は見られなかった。このことは、RARα遺伝子は必ずしも個体発生や生体機能の維持に必須ではなく、他のRAR遺伝子(RARβ,RARγ)がその機能を代償しうる可能性を示している。上記の結果はこれらの事実と相反しているが、上記の実験で用いたAS-DNAの塩基配列がRARα特異的ではなく、造血に必須な未知の遺伝子の発現を抑制している可能性もあり、追試の結果が待たれる。
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