研究概要 |
本研究の目的は1)培養腎細胞にアデノウイルスによる遺伝子導入が可能か,2)可能ならば最適な感染条件はどのようなものか,3)感染された細胞はその本来の機能を維持しているか,を検討することであった.3種類の培養腎細胞(rat mesangial ccll,MDCK cell,LLCPK1 cell)と,大腸菌lacZ遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを用いて実験を行ない,以下の結果を得た. 1.培養腎細胞に対するアデノウイルスによる遺伝子導入の可能性:十分な量のアデノウイルスベクター(65moi)を用いることにより,いずれの培養腎細胞においても,ほぼ100%の効率で外来遺伝子を導入することができた. 2.最適な感染条件:65moiのアデノウイルスベクターを37℃,1時間,細胞とインキュベーションすることにより100%の効率で外来遺伝子を導入することができた. 3.感染された細胞の機能維持:上記の感染条件で感染させた細胞について,顕微鏡学的形態および細胞増殖能について,非感染細胞と比較したがいずれも検出できる差異を認めなかった. 以上の結果は,アデノウイルスベクターが腎細胞に外来遺伝子を導入する手段として非常に有用であることを示した.今後,腎臓病の遺伝子治療を最終的な目標として,in vivoでの腎細胞への遺伝子導入の研究への道を開くものである.今後この研究をさらに発展させるため,hepatocyte growth factor(HGF)遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを作成し,動物実験モデルでの腎疾患の遺伝子治療の研究を行なう予定である.
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