研究概要 |
申請者は本研究の申請時の目的として、1)α6(IV)鎖,α4(IV)鎖遺伝子構造の決定2)遺伝性腎糸球体基底膜疾患の遺伝子変異の検索を掲げた。その結果、 1)α6(IV)鎖全遺伝子を含む重複クローンを単離し、全遺伝子構造を決定した(文献2,3参照)。さらに、その中の最上流の遺伝子断片の解析により、α6(IV)鎖遺伝子(COL4A6)とα5(IV)鎖遺伝子(COL4A5)はbidirectional promoterにより転写制御され、COL4A6はAlternativeなpromoterによって発現制御されることを初めて報告した(文献1参照)。この結果は、従来知られていたα1(IV)鎖遺伝子(COL4A1)とα2(IV)鎖遺伝子(COL4A2)と同様にその他α(IV)鎖遺伝子でもbidirectional promoterにより転写制御されていることを初めて示したものである。また、Alternativeなpromoterの存在はCOL4A6の組織特異的発現に関与すると推測される。 2) 1)の結果をもとに、まずα6(IV)鎖遺伝子およびα5(IV)鎖遺伝子の関与する遺伝性疾患の家系解析に有用なマーカーとして(CA)nマーカーを検索した。1)で単離したCOL4A6断片から(CA)n配列を発見し、3つがマーカーとして有効であると判断された(投稿準備中)。また、疾患検索の準備としてPCR-SSCP実験を行なうため、全エキソンをはさむようにプライマーを設計した。これらは遺伝性腎糸球体基底膜疾患のみならず、最近関連性が示唆されたびまん性平滑筋腫の責任遺伝子としてのα6(IV)鎖遺伝子の変異の検索に有効であると思われる。
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