研究概要 |
DOCA(15mg/日,皮下注)の投与及び食塩負荷によりDOCA食塩高血圧(低レニン性高血圧)モデル犬の作製を行った。2週間の投与で平均約30mmHgの昇圧を認め、血漿レニン活性は測定感度以下と低値であった。 低レニン性高血圧モデル犬に対し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬としてDup753(6mg/kg/hrdiv)を投与した。投与後3時間にわたり、血圧、脈拍、糸球体濾過率(イヌリンクリアランス)、有効腎血漿流量(パラアミノ馬尿酸クリアランス)に有意な変化は認めなかったが、尿量、尿中Na排泄量は有意に上昇した。低レニン性高血圧モデル犬においてもアンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与により水Na利尿を認め、全身循環血中のアンジオテンシンIIと腎組織内のアンジオテンシンIIは異なる調整を受けている可能性が示唆された。 次に、正常モデル犬、低レニン性高血圧モデル犬の各々の腎組織のアンジオテンシンI、アンジオテンシンII、アンジオテンシン変換酵素活性の測定、またアンジオテンシンIIタイプI受容体のmRNAの発言量をPCR法を用い比較した。その結果、両群において、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、アンジオテンシン変換酵素活性およびアンジオテンシンIIタイプI受容体のmRNAの発現量に有意差はなかった。このことは全身循環血中のアンジオテンシンIIと腎組織内のアンジオテンシンIIは異なる調整を受け、低レニン性高血圧において、受容体発現調節に変化はなく、アンジテンシンIIの腎組織内濃度も低下していないことが示された。
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