研究概要 |
本研究の目的は、主として糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の相互作用を介する両者の増殖制御に関して検討することである。まず、われわれは両者の混合培養系を確立して、リガンド非刺激下での相互作用を検討した。両者が接着する混合培養系では、10μg/mlのマイトマイシンで処理したメサンギウム細胞を糸球体内皮細胞と同じwellで培養すると、糸球体内皮細胞の増殖は2日目で30%、4日目で44%抑制された。メサンギウム細胞単独および糸球体内皮細胞と混合培養したメサンギウム細胞の培養上清中にはWestern blotで検出可能なTGF-βを認めた。これらの培養上清を糸球体内皮細胞に作用させると、前者では[^3H]thymidineの取り込み率が変化しなかったが、後者では[3H]thymidineの取り込みは抑制され、この作用は抗ヒトTGF-b抗体(10μg)で有意に阻害された。以上より、両者の混合培養上清中には活性化TGF-bが存在し糸球体内皮細胞の増殖を抑制したものと考えられた。一方、両者が接着しない混合培養系では、24時間目にメサンギウム細胞への[^3H]thymidineの取り込みは22%促進された。この作用にPDGF様物質が介在するかどうか検討した。糸球体内皮細胞の培養上清中にはメサンギウム細胞の増殖を促進する因子が含まれており、抗ヒトPDGF抗体によりこの作用は阻害され、100℃、30分の処理に安定で、pH2.5,22℃、30分の処理で失活することなどより、PDGF類似物質の関与が示唆された。このように、リガンド非刺激下ではTGF-βとPDGF類似物質により両者の増殖が制御されていると考えられる。今後は、各種の酵素および酵素阻害剤を用いて、これらの物質の活性化機構について検討する予定である。
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