研究概要 |
1、我々の教室で開発したThy1.1腎炎は、広くヒトの増殖性腎炎のモデルとして認識されている。その特徴は、メサンギウム細胞の免疫学的障害と、その後に出現するメサンギウム細胞増生であり、ヒトの増殖性腎炎と類似した形態像を呈する。しかし、このモデルの増殖性病変は一過性であり、増生細胞は減少し、糸球体は本来の形態像にまで回復する。増殖性腎炎の回復には、増生細胞の減少が必要であり、この修復過程における増生細胞の減少はアポトーシスによることを明らかにした。さらに、この過程にみられるアポトーシスの一部は腎炎早期に糸球体内に浸潤した浸潤白血球であるが、アポトーシス細胞の主なものは増生メサンギウム細胞であること報告した(Kidney Int.47:114-121,1995)。 2、ハブ毒腎炎は、メサンギウム細胞、基質の非免疫学的障害により発症する増殖性腎炎であるが、この腎炎も一過性であり、増殖性腎炎は回復する。この過程における増生細胞の減少もアポトーシスによることを明らかにし、増殖性腎炎におけるアポトーシスの出現の普遍性を確認した。 3、腎生検材料を基に、ヒトの増殖性腎炎にもアポトーシスが出現することを確認した。さらに、増殖性病変の程度が強い腎炎にアポトーシスの出現頻度が多い傾向がみられた。 これらのことより、増殖性腎炎の回復には、アポトーシスによる増生細胞の減少が必要であり、アポトーシスの制御が、増殖性腎炎の治療にもつながるものと考えられる。
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