研究概要 |
新生児特発性嘔吐症は,器質的疾患や明らかな基礎疾患を認めないにもかかわらず哺乳開始とともに嘔吐を繰り返し,輸液等の治療が必要な疾患である.一般には予後良好で,一種の適応障害であろうと考えられるが,脳浮腫のような微細な脳障害が原因ではないかと推察する報告もあり,原因を解明する必要がある. 特発性嘔吐症の児では,消化管ホルモンの分泌の適応が遅れるのではないかと推測し,特に,新生児の腸管運動や消化吸収機能の発達の目安になるモチリン・ソマトスタチン・ガストリンについてRIAで測定して検討することにした. 1,RIAによる検査方法の確立 RIA法による測定の経験が無かったことから,測定方法の修得のため,以前に保存しておいた臍帯血,生後1時間,8時間に採取した保存血漿を用いて3症例で計15検体について濃度の測定を行った.検体の除蛋白操作は行わなかったが,臍帯血に比べて出生後の血漿濃度が低いためか,本人血では測定感度以下だった.このため,検体に除蛋白の操作を加えた後に行うことにした. 2,検体の採取 特発性嘔吐症の成熟新生児を対象に,血液を24-48時間毎に症状が軽快するまで,1症例につき1-3回にわたって血液を採取し,直ちに血漿分離し凍結保存した.計5症例から採取した. 3,測定および結果 採取した検体のうち,3例について,モチリン・ソマトスタチン濃度の測定を行った.モチリンは,臍帯血に比べて,出生後2-3日目は低値をとった.その変動の仕方は,正常新生児との間に差を認めなかった.ソマトスタチンについては,特発性嘔吐症の児では,正常新生児に比べて高い値をとった.ソマトスタチンの分泌亢進が特発性嘔吐症と関連している可能性が示唆された.さらに,ガストリン濃度の測定を加えて,ガストリン/ソマトスタチン比についても検討する予定である.今後,症例数を増やしてデーターを蓄積して検討していく予定である.
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