研究概要 |
1.新鮮同種動脈移植における拒絶反応の評価 主に光学顕微鏡と走査電子顕微鏡にて拒絶反応の時間的推移を検討した。その結果、拒絶反応の発現は移植後2週目からで、内膜肥厚と外膜細胞浸潤にはじまり、4週でそれらの反応がピークとなり、以後中膜平滑筋細胞の変性・壊死が進む。グラフトの内皮細胞は、移植直後一旦脱落し、移植後3日目頃より再生し始めるが、再内皮細胞化が完成した2週目頃に新生内皮細胞に対して多数の白血球の付着をきたし、以後再び変性・脱落が徐々に進行する。以上の知見から、新生内皮細胞はdonor由来であること、拒絶反応の発現が他の臓器移植と比較して著しく遅れるのは、主なる抗原性を有する内皮脂肪が移植早期に脱落することに関係があることなどが考えられ、これらの点について現在、組織適合抗原や接着分子、サイトカインリセプターなどに関連したモノクローナル抗体による免疫組織染色により、詳細な検討を行っている。 免疫制御剤(FK506)効果について 比較的少量(投与量:0.1mg/kg/day,血中濃度0.2ng/ml)でほぼ完全に拒絶反応を制御でき、明らかな副作用も認めなかったが、免疫抑制剤中止により上記と同様な拒絶反応が出現した。従って、今後は、免疫抑制剤のより少量維持療法をいかに安全に行うかが重要であると考えられる。そのためには優れた拒絶反応のモニタリングが必要であり、今後上記1.の検討から拒絶反応の適切な指標は何かを検討してゆく。
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