研究概要 |
1 ブタ頚動脈からの細胞外マクリックス人工血管の作成 ブタ頚動脈に0.5%Triton 20mM NH_4OHを4時間作用させた結果では,細胞が融解し細胞外マトリックスが得られる範囲は内膜,外膜のみであり,中膜の大部分は核が残存し細胞成分を完全に除くことはできなかった.そこで0.5%Triton 20mM NH_4OHの浸透を高めるために,microwave処理を1時間併用したところ,光顕上,中膜でも核が消失し細胞外マトリックス成分を残すのみとなった.しかし,細胞骨格成分,核内蛋白成分は残存している可能性があり,免疫組織化学的検討が必要と考えている. 2 細胞外マクリックスとfibroblast growth factor(FGF)の局材,結合 basic FGF抗体による検討では0.5%Triton 20mM NH_4OH,microwave処理後の血管の内腔面にbasic FGFの存在が示され,内皮細胞下の基底膜に存在しているFGFが処理後も温存されている可能性,細胞質内のFGFが細胞融解時に細胞外マクリックスのheparan sulfateに結合した可能性が考えられた.また,中膜の細胞外マトリックスにも陽性所見が見られた.さらに,basic FGF 20ng/ml PBSと室温で1時間incubateするとFGFの染色性が増加し,heparin 25μg/ml PBS 15分間処理でFGFはほとんど見られなくなった.FGFの結合は細胞外マクリックスに存在すると考えられるheparan sulfateで十分であり,heparinの仲介は不必要と考えられた. 3 イヌへの移植実験 現在までに3匹のイヌの一側腸骨動脈にbasic FGFをさらに結合させた細胞外マトリックス血管,対側にheparin処理でFGFを除いた血管を移植した.さらに例数を増やし経時的に観察していく計画である.
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