Nitric oxide(NO)は血管拡張作用、血小板凝集抑制作用、白血球付着抑制作用を持つ一方、活性酸素と相互作用し細胞障害をひきおこすONOO^-、OH^-を発生する。以上の生理的特性より、NOが虚血再灌流時の臓器に対し保護的効果をもつのか細胞障害因子であるか興味深い点である。これまでに心臓において検討されているが、一定の見解が得られていない。今回、NOのラット腎における虚血再灌流障害におよぼす影響と保存腎のNO産生能に関して検討した。 雄性Wistar系ラット(250-350g)を用いてネンブタール麻酔下に開腹し右腎を摘出後、左腎を周囲より遊離しmicro vascular clampをもちいて腎動静脈血流を遮断し、血流再開後24時間における血清クレアチニン値、24時間クレアチニンクリアランス、尿中NAG、NOのマーカーとして左腎のcyclic-GMPを測定した。生食、NO合成阻害剤であるL-NAME(10mg/kg)、NO合成の基質であるL-Arginine(100mg/kg)を阻血前20分、血流再開前10分に経静脈性に投与しラットを以下の7群に大別した。1群:sham、2群:温阻血(45分)、生食、3群:温阻血(45分)、L-NAME、4群:温阻血(70分)、L-Arginine、5-7群は70分温阻血で2-4群と同様に分類した(各群n=4-7)。またUW液にてflushした腎を同液にて3、24時間保存し保存液中のNO2^-と腎組織中c-GMPを測定した。 ラット腎のcyclic-GMP量(NO産成能)は温阻血時間が延長するにつれ有意に減少し、これに相関して腎機能も低下した。すなわちNOの阻血、再灌流腎に対する細胞保護効果を認め、温阻血腎機能がL-NAMEにより傷害され、L-Argにより改善することより、内因性NO産生を増強させることで腎阻血、再灌流障害が軽減する可能性が示唆された。また24時間単純浸漬保存腎においてもNO産成能は保持されており腎保存におけるNOの関与が示唆された。
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