研究概要 |
我々はドナー脾細胞をレシピエント胸腺内に投与し、併せて抗リンパ球血清の一回投与でレシピエントの成熟したT細胞を一過性に抹消することにより、ドナー特異的移植片寛容を誘導することに成功している。本研究の目的は、本モデルおいて胸腺内アロ抗原認識のメカニズムと寛容誘導の至適条件を追求することである。 25x10^6個のドナー(LEW,RT1l)脾細胞をレシピエント(BUF,RT1b)胸腺内へ投与し、同時に1mlのウサギ抗ラットリンパ球血清をレシピエント腹腔内へ投与した。21日後、レシピエント腹腔内に移植されたドナー心は長期生着した(_>155days(n=13))。十分の一量である2.5x10^6個のドナー脾細胞を用いると生着延長効果が殆ど消失した(16.3±7.3days(n=7))のに対し、2.5x10^6個のドナー脾細胞マクロファージ投与を行うと全例が長期生着した(_>136days(n=4))。しかしながら、抗MHC-classII抗体で処理した脾マクロファージを用いると生着延長は認められなくなった(6.3±0.6days(n=3))。 以上の結果より、ドナー脾細胞胸腺内投与による特異的寛容は脾マクロファージ分画を用いることにより効率的に誘導され、マクロファージ膜表面のMHC抗原が極めて重要であることが示唆された。現在、誘導された寛容状態の免疫学的解析を行っている。
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