[目的]胃粘膜血流の熱傷後の変動と流血中白血球および胃粘膜が産生する活性酸素の変動を対比することにより熱傷後の各時相における種類の異なる活性酸素の胃粘膜病変形成への影響を検討する。 [方法]220〜270gのWistar系雄性ラットの背部に麻酔下に3度30%の熱傷負荷をおこなった。胃粘膜血流は電解式水素ガスクリアランス法を用いて測定した。背部剃毛のみのcontrol群、熱傷後15分、2、5、12時間の各群について検討した。左胃静脈、門脈、下大静脈よりの白血球産生活性酸素はルミノール依存性ChL値をオプソニン化ザイモザンを刺激剤として測定し、白血球数あたりに換算した。胃粘膜産生の活性酸素はルシフェリン依存性ChL値で測定し、湿重量あたりに換算して比較した。 [結果]胃壁血流は熱傷後15分で低下し、2時間は不完全ながら改善、5時間に再び低下し、24時間後にまた改善を認めた。胃静脈血・門脈血・下大静脈血白血球由来ルミノール依存性ChL値はいずれもControlに比較し熱傷後15分で有意に減少、5時間と12時間で有意に上昇した。胃粘膜由来ルシフェリン依存性ChL値はcontrol群に比較し熱傷後15分より12時間まで有意な高値であり、2時間と12時間で特に高値であった。 [考察]白血球が産生する活性酸素は熱傷後5時間で高値であり、全身の炎症反応を反映していると思われた。胃粘膜発生の活性酸素は、血流の改善時期に一致して高値となっており、Xanthine oxidaseを介した活性酸素合成系の関与が想定された。 [結論]熱傷ストレスラットモデルにおいて、循環血流中の白血球由来と胃粘膜由来という2つの異なった産生系の活性酸素が、急性胃粘膜病変の形成過程においてそれぞれ異なった時相で関与している可能性が示唆された。
|