研究概要 |
肝における虚血再潅流障害や肝切後の肝細胞障害の際、組織障害と活性化好中球との関係が注目されている。各種サイトカインにより遊走、活性化された好中球は活性酸素や顆粒成分を介して組織障害を引き起こすと考えられている。そこで、われわれはG-CSF(granulocyte-colony-stimulating-factor)を経門脈的に投与し白血球増多、好中球機能の賦活を誘導し活性化好中球が肝細胞に及ぼす影響を検討した。実験動物としてHartley系雄性モルモットを使用し、脾臓を有茎に脱転し背部皮下に固定して、脾静脈を介した経門脈的投与ルートを造設した。そのモデルを用いて経門脈的にG-CSFを投与すると血清GOT,GPTが有意に上昇し、組織学的には好中球浸潤を伴った肝細胞障害が発生した。その際、肝組織内過酸化脂質が有意に上昇しており活性酸素が関与していることが推察された。次にcyclophosphamideを用いてleukopenicな好中球機能の低下した状態における反応を検討した結果、肝細胞障害は軽度であり、本反応における好中球の関与を裏図ける結果となった。次にG-CSF投与前にPGI_2、OKY046を経門脈的に投与するとGOT,GPTの上昇はG-CSF単独投与に比べて有意に抑制された。以上の実験結果から生体内で活性化された好中球は活性酸素、アラキドン酸代謝経路を介して肝細胞障害を引き起こすことが示唆され、好中球を介した組織障害に対するPGI_2,OKY046の有効性を確認した。
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