当初、静脈瘤手術患者より得た大伏在静脈を材料とするはずであったが、近年、本手術の件数が減少し材料入手が困難になった為に日本白色家兎(20羽)の下大動脈、下肢静脈を材料とした。静脈片から内皮細胞と外膜を除去した後に1mm大に細切しcollagenaseにより処理し酵素法にて初代培養平滑筋細胞(VSMC)を得た。家兎の静脈片でも本法により安定して細胞が採取できる(1羽あたり約10^5個)ことが確認された。 1.対照実験 1プレートあたり10^4個のVSMCに調節し実験を行なった。まず始めにマトリックスでcoatingしていないプラスチックシャーレ上での培養実験を行ないコントロールとした。プラスチックシャーレ上で牛胎児血清で培養されたVSMCは約72時間後より増殖期に入り、120時間目より対数増殖期に入った。なお細胞数測定にははコルターカウンターを用いた。 2.マトリックスの影響 上記コントロール対して各種マトリックスを塗布したシャーレ上でのVSMCの動態を検討した。コラーゲンには抑制能はなくコントロールとほぼ同様の曲線を呈したがエラスチン、ラミニンにおいては対数増殖曲線の右方移動が見られ、対数増殖期に入るのに約168時間を要した。BrdUと免疫組織科学を用いた増殖率測定でも同様の結果が得られた。すなわち72時間の時点でコントロール=65±18%に対してエラスチン群=43±10%であった。 現時点までに得られているこれらの結果からVSCMはマトリックスにより制御されていることが明かとなった。今後はこれらマトリックスを破壊する酵素であるmetalloproteinaseのtransfectionを行ない上記実験系における動態を検討する予定である。
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