【目的】頭蓋顎顔面外科の臨床において Facial Highlight と Lowlight は東洋と西洋では逆転しておりこの領域の手術をする上で興味深いが、東洋における近年の頭蓋顔面計測およびその臨床応用に関する論文は少ない。日本人および中国人の下顎骨を中心とする正常頭蓋顔面骨の計測を無作為に選んだ25歳から45歳までの男女200名に対して比較人類学的に検討する。いわゆる咬筋肥大症の外科的治療法にとくに作製した器具を用いてこれらの正常値を適要する。 【方法】1)正常頭蓋顔面計測器の開発;従来の顔面規格写真撮影装置に準じた頭蓋顔面計測のための Cephalometric System、Modified Face Bow、Facial Calipers を用いての正常頭蓋顔面骨計測、またその術後評価への利用を目的とする。 2)正常者の頭蓋顔面骨矢状放射径と幅径の計測;今回は25歳から45歳までの日本人と中国人の男女をそれぞれ50名、計200名について下顎骨の計測を中心におこなう(Modified Face Bow による頭蓋顔面矢状放射径、幅径および Facial Calipers による頭蓋顔面幅径の計測)。さらに下顎骨形態の把握のため咬合撮影、顔面規格写真よりの計測値を加味する。 3)その臨床応用;上記 1)の計測器具の術中使用をおこなう。下顎隅角骨切りに対して Gonial Angle Stripper をとくに作成し、いわゆる咬筋肥大症の外科的治療に応用する。日本および中国の5つの頭蓋顔面外科施設での同器具の monitoring を依頼する。 【結果】正常日本人および中国人の計測による下顎枝角の平均値はそれぞれ、125.2゚、119.0゚であり、下顎隅角部の形態に関しては前者では後方突出が、後者では外側への突出がより顕著であった。臨床的には従って、日本人の下顎隅角骨切りにおいて今回作成した Gonial Angle Stripper が有用でこれまでに15例の咬筋肥大症症例等に応用した。切除骨片の最大幅も上石の‘K-line'の正常計測および臨床経験により、15mmをその最小限と設定した。なお本器具は日本(近畿大学等)、中国(台湾Chang-Gung Memorial Hospital等)にて臨床使用 monitour中である。
|