筆者が作製したラット70%肝切除+胆汁性腹膜炎モデルは、腹腔内に漏出した胆汁が持続的に腹膜から吸収されるため、経時的な黄疸の増強がみられるものの肝内胆汁鬱滞を認めず、腹水細菌培養は陰性であり、DNA合成に代表される早期の肝再生に対する胆汁性腹膜炎の影響を検討する上で極めて有用なモデルである。術後24および48時間のBrdU標識細胞によるlabeling indexは、肝切除のみで22.4、7.5%、胆汁性腹膜炎付加にて4.4、8.8%であり、胆汁性腹膜炎の誘導は肝再生の発現を有意に遅延させ低下させた。この機序として、1)胆汁成分の直接的なミトコンドリア膜障害によるエネルギー代謝障害と、2)肝脂質過酸化の亢進をこれまでの検討で明らかにしたが、3)血清中に何らかの肝再生抑制因子が含まれている可能性を推測してみた.すなわち上記の2つのモデルにおいて、経時的に採血し分離した血清を、in vitroで5×10^5/mlに調整した肝細胞単独培養系に加え、その肝再生を^3H-thymidineを用いて検討した。また種々の濃度のエンドトキシン(Et)を添加し、同様の検討を行った。 肝再生は正常血清添加に比較し肝切除血清で約2/3、胆汁性腹膜炎血清で約1/3に抑制された。無血清では肝再生が発現せず、添加Etによる直接的肝再生障害も認められなかった。両モデル血清中のEtは胆汁性腹膜炎でやや高かったものの正常範囲内で有意差はないことからEtの関与は否定的で、現在その抑制因子としてIL-6、IL-8、TNFを測定中である。
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