小腸を肝灌流経路に組み込んだ新しい灌流法を利用し、小腸からの吸収と肝での代謝を同時に定量する実験を行った。 免疫抑制剤の一つであるFK506の消化管からの吸収部位を検討し、上部小腸からの吸収が最も活性が高い可能性が示唆された。小腸を分割灌流し、それぞれの部位での吸収を定量し、ほぼ80%以上のFK506が上部小腸で吸収され、速やかに肝で代謝されることが明らかとなった。肝での代謝速度はまだ例数が少なく、検討できていないが次年度に行う予定にしている。また、今後、吸収を促進、阻害する物質、条件等を検討してゆく予定である。 小腸灌流において、安定した灌流速度を得ることがまず困難で、これが一定していないと門脈血流の不安定につながり、安定した灌流法は得られないことになるためこれに最も留意した。 現在、FK506に続きCyclosporin Aも検討中である。今後、これらのデータを学会、論文にて発表してゆく予定である。 この実験過程でえられた付随の成果として、1)灌流スピードは肝重量1gあたり4ml/minでこれより逆算して、肝動脈流量は30%の1.2ml/min/gliver、腸管灌流(いわゆる門脈流量)は2.8ml/min/gliverが至適条件であることが明らかになった。2)小腸の絨毛の変性はこの灌流では約120分は起こらないことが明らかとなった。 これらのデータは次回の外科学会で報告する予定にしている。
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