研究概要 |
本研究は腹腔内に残存したリンパ節転移巣に対する光化学療法の確立を目的とする。 1.光感受性物質(ヘマトポルフィリン誘導体)の腫瘍親和性の増強と投与量削減による副作用軽減のため剤形変更により光感受性物質であるpolyhematoporphyrin ether(PHE)のWater in Oil in Water多相エマルジョン(PHE w/o/w エマルジョン)を我々が独自に開発した方法で創製した。 2.投与経路別に経時的 PHE 濃度を HPLC 法を用いて測定した。 全身投与群(PHE 2mg/kg)では投与6時間後にピークを示し腫瘍内濃度は10.8±0.5μg/g,PHE w/o/w エマルジョン局所投与群(PHE 0.5mg/kg)では1時間後にピークを示し腫瘍内濃度は10.7±0.1μg/gであった。 また血中 PHE 濃度は全身投与群では8.1±0.9μg/ml,PHE w/o/w エマルジョン局所投与群では検出限界値2.5μg/ml以下であった。 転移リンパ節においても同様の結果であった。 すなわちPHEをw/o/w多相エマルジョンとすることにより1/4以下の投与量で PHE は腫瘍および転移リンパ節に全身投与と同様高濃度に移行し、逆に血中濃度は低いことを確認した。 3.現在、腹腔内転移リンパ節モデルに新しいpulse dye laserであるYAG-OPOレーザーを導入し、これによる光化学療法を行いその効果を検討中である。 今後、腹腔内転移巣への副作用の少ない新しい治療法として臨床応用可能である。
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