研究概要 |
移植肝の生着率を向上させるためには、肝のviabilityを良好な状態に維持する必要があり、臓器保存液の良否は極めて重要な条件で、手術手技の面だけでなく、より優れた新しい臓器保存液の開発が期待されている。本研究では種々のmetabolic regulatorとしての作用を有しているfructose-1,6-diphosphate(FDP)に注目し、FDPを臓器保存液に添加した際の肝viability保持効果について検討した。 Wistar系雄性ラットの摘出肝を、4℃ UW solutionを用い、FDP無添加とFDP10mMを含む保存液でそれぞれ24時間浸漬保存して比較した。評価法としては、(1)ガラス電極法による経時的な肝組織pHの変化、(2)HPLC法による24時間浸漬保存後の肝組織ATP量、total adenine nucleotides量(TAN)、energy charge(EC)、(3)アントロー硫酸法による24時間浸漬保存後の肝グリコーゲン量を測定した。 その結果、肝組織pHの変化は2群間で差はなかった。24時間浸漬保存後の肝組織ATP量、TAN量およびECはFDP添加群で高く保持されていた。また、肝組織グリコーゲン量もFDP添加群で高く保持されていた。以上より、FDPの肝におけるエネルギー保持効果が明らかとなり、臓器保存液への応用の可能性が示唆された。 今後、肝組織乳酸量とピルビン酸量の測定と電子顕微鏡による組織学的検討を行うとともに、24時間浸漬保存後再灌流時の肝viability保持効果についても検討する予定である。
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