肝再生率をみると、肝切除のみの群とこれに膵切除50%加えた群ではともに経時的に高くなっていた。肝切除のみの群では1、3、7、14、28日目の肝再生率ははそれぞれ、29.6%、57.7%、69.6%、79.1%、97.9%であった。膵切除を加えた群では、それぞれ、33.9%、43.8%、54.6%、72.4%、92%であった。全体的に肝切除のみのほうが再生率はよい傾向にあった。統計学的に比較すると術後3、7、14日目の再生率が危険率5%で有意差があった。 GOT、GPT、アンモニア、血糖の変動で両群に有意差はみられなかった。 門脈血中のインスリンとグルカゴンの値では、単開腹下で採血した門脈血のインスリン濃度は平均31.2μU/ml(n=10)でグルカゴン濃度は152.4pg/ml(n=10)であったグルカゴン/インスリン比は約5(pg/μU)であった。 術後7、14、28日目で両群ともインスリンは低下していたが、グルカゴンは上昇していた。 両群間でみるとインスリンの減少に有意差はみられなかったが、肝切除のみのものは徐々にインスリン濃度が上昇していくのに対し、膵切除群ではその上昇傾向はなかった。グルカゴン濃度の上昇は膵切除を加えて群で著明であるが、肝切除のみの群では経時的に低下していった。しかし、膵切除群では低下傾向が弱かった。 グルカゴン/インスリン比をみると、肝切除のみの群では術後の経過とともに低下し28日目には比は9と正常(単開腹時のデータは約5)に近ずいているが、膵切除合併群は低下傾向がなかった。 膵ホルモンが肝再生に及ぼす影響のひとつとして、門脈血中のグルカゴン濃度上昇やインスリン濃度の低下が考えられ、グルカゴンとインスリンとのインバランスが肝膵同時切除の際の肝再生に影響を及ぼすもののひとつではないかと考えられ、さらなる詳細な実験と検討が必要であると思われた。
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