研究概要 |
組織再構築型人工食道開発のため、正常ヒト食道上皮細胞、正常ヒト線維芽細胞を用いて以下の実験を行った。 1.ヒト線維芽細胞をコラーゲンゲルに包埋培養したマトリックスの検討 ヒト真皮由来の線維芽細胞(三光純薬)0、8、16×10^5個をtypeIコラーゲンゲル2mlに包埋培養した直径35mmのコラーゲンは、7〜10日間収縮して、直径8〜13mmの円盤状のシートになった。線維芽細胞を包埋しないコラーゲンの収縮は認められず、包埋する線維芽細胞数が多いほど収縮率は高かった。 2.ヒト食道上皮細胞シートの検討 食道癌新鮮切除標本より、ディスパーゼ、トリプシンを用いて採取した食道上皮細胞を、1で作製した各種濃度のコラーゲンシート上で培養した。線維芽細胞非包埋コラーゲンシート上での上皮細胞は、培養14日目で2〜3層に重層化したが、培養21日目では発育に変化を認めなかった。8×10^5個包埋シート上では、培養14,21日目で3〜4層,4〜5層に重層化した。16×10^5個包埋シート上では、培養14,21日目で10層,17〜18層に重層化し、さらに細胞の形態は基底層から上方に向かい扁平化を呈し分化傾向を認めた。つまり、包埋する線維芽細胞数が多いほど上皮細胞の重層化は促進されることが明らかになった。 3.ヌードラット腹直筋への移植 2で作製した線維芽細胞8×10^5個包埋ヒト食道上皮細胞シートの、ヌードラット腹直筋への移植実験においては、移植後22日目の組織像で、上皮細胞は10層以上の重層化を示し、コラーゲン層には新生血管を認め、炎症生細胞浸潤も軽度で、生体への生着は可能であった。
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