研究概要 |
消化器癌患者などの担癌生体ではmitogen responceなどのT細胞機能不全が見られるがこれが何に起因しているかは不明である。そこで今回、癌患者免疫不全発症機構の解明と消化器癌免疫療法開発の基礎研究となることを目的として、抗原提示、認識機構を検討した。 まずB細胞腫瘍であるA20-HLをAPCとし、B細胞における抗原のprocessing過程、および、MHCclassIIとの会合過程を検討するため、抗原にOVA,TNP-OVAを用いてさらにEmetinを阻害剤として、OVAに特異的に反応するT clone(42・6A)によるIL-2産生量の変化を指標にして検討した。その結果、EmetinはOVAの抗原提示を特異的に阻害し、TNP-OVAの提示には影響が見られなかった。これは、pinocytosisによるprocessingとレセプターを介するprocessingとの間に何らかの違いがあることを示唆している。そこで次にこのT cloneが認識するOVA_<323・339>のアナログペプチドであるAKペプチドを用いて同様に検討した。その結果A20-HL細胞をOVA,TNP-OVAで抗原パルスし、これに42-6Aを反応させるとIL-2産生が見られるものの、抗原パルス時にAK peptideを6μM添加しておくとOVAに対するIL-2産生は抑制されたものの、TNP-OVAに対しては抑制が見られなかった。また、AKペプチドは他の抗原に特異的なT cloneの反応性を阻害しないこと、^<125>I-AKペプチドが20-HL表面のMHC classIIに結合していること、A20-HL細胞内での抗原processing過程には影響していないことなどから、Emetinによる阻害と同様の結果が想定された。そこで一般に細胞表面に存在するとされるTransferrinレセプターを利用した同様の試みを行ったが、transferrin-OVA作製は非常に困難であり、有意な結果が得られなかった。現在、palmitate-OVAを作製してさらに詳細に検討を行っている。癌には癌抗原がありこれが提示、認識されて増殖すると思われるため、この基礎研究を癌発生の基礎研究として推進する予定である。
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