研究概要 |
膵管胆道合流異常はヒトにおいては、胆道癌の発生が極めて高いことが知られている。本実験では生理的に共通管の著しく長いハムスターを用い、ヒト及びハムスターの膵液酵素組成を測定し、ハムスターではヒトに比しtrypsin,elastase-1,及びphospholipase A2が著しく低値であることを証明した。これに基づいて発癌剤N-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)を投与した10週令のsyrian golden hamsterを用い、胆嚢瘻を作成しこれより生理的食塩水の注入群(第1群)とヒト膵液注入群(第2群)を作成し、胆道癌の発生が第2群でより誘発されるかについて検討を行った。発癌剤であるBOPは1週目70mg/kg/1回投与し、以後20mg/kg/1回/週、1回0.1mlずつ胆嚢瘻より投与した。10週間の観察期間後、屠殺し胆道系を病理組織学的に検討した。過形成は第1群、第2群とも、胆道内に10週間後100%に種々の程度の過形成性変化を認めた。腺腫は10週後は第1群で30%(3/10)、第2群で82%(9/11)の発生で、第2群で危険率5%で有意に高い発生を示した。癌では10週後、第1群で10%(1/10)、第2群で64%(7/11)であり危険率5%で第2群で有意に高い癌の発生を認めた。 以上のことよりヒトの膵液酵素の成分が、胆道における発癌に強い影響を与えていることが示唆された。本実験はヒトの膵胆管合流異常の発癌実験モデルとして有用で、本質的な実験モデルと考える。
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