研究概要 |
食道癌細胞の代謝を考慮した新しい治療を目指し、メチオニン欠乏状態下におけるメチオニン-マイトマイシンC結合体(Met-MMC)の抗腫瘍効果について実験的検討を施行したところ、以下の結果を得た。 (1)Met-MMCの作製: メチニオン100mgとMMC6mgを生食水で溶解し20分のソニケーションの後、Water Solble Garbodiimide(WSC)で24時間反応結合(pH6,4℃)させ、sephadex G-15 カラムでゲル濾過することにより150μgのMet-MMCを得た。 (2)In vitro実験: ヒト食道扁平上皮癌細胞(KIS-3)を用い、通常培地(10%FBS+RPMI1640)で培養するメチオニン(+)群とメチオニン欠乏RPMI+10%FBSの培地で培養するメチオニン(-)群を作製し、3時間培養した後にMet-MMC投与(Conj群)もしくはMMC単独投与(MMC群)を行い、さらに12時間培養した後に死細胞率を検討した。また、比較対照としてPBSを投与したControl群を作製して同様に検討した。その結果、メチオニン(-)のConj群は他の2群と比べて有意な殺細胞効果を示した。 (3)In vi-vo実験: ヒト食道扁平上皮癌(KE-3)移植ヌードマウスを用い、腫瘍最大径が約1cm程度にまで増殖させた後、体重と腫瘍換算重量を測定し、メチオニン欠乏アミノ酸含有高カロリー輸液を4日間経口摂取させる(Met-)群と必須アミノ酸含有高カロリー輸液を同様に摂取させる(Met+)群を作製し、in vitro実験と同様にConj群、MMC群、Control群の計6群を作製し、これら薬剤を4日間volus injectionしてMet-MMCの抗腫瘍効果を比較検討した。なお、アミノ酸含有高カロリー投与後は通常の固形飼料を自由摂取させた。その結果、Met+輸液摂取では腫瘍成長率に3群間に有意差を認めなかったが、Met-群ではConj群が他の2群と比べて有意な腫瘍成長抑制効果を示し、食道扁平上皮癌に対する新しい化学療法となり得る可能性が示唆された。
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