研究概要 |
1.原発性肺癌患者73症例について,切除標本の免疫組織染色を行うことにより,肺癌細胞のHLA発現及びリンパ球浸潤が患者予後にどのような影響を及ぼすかについて検討した. 1)腫瘍組織においてHLA class Iおよびclass IIの発現およびリンパ球浸潤が見られた症例はそれぞれ51%,49%,67%であった. 2)腫瘍の分化度が低下するほど,HLAの発現も低下する傾向にあったが有意ではなかった. また,HLA class IIとリンパ球浸潤の間にも有意な関係は見られなかった. 3)HLAの発現および腫瘍内リンパ球浸潤それぞれの因子において陽性例と陰性例に有為な生存率の差は認めないものの,HLA class Iと腫瘍内リンパ球浸潤を組み合わせることにより,class I発現およびリンパ球浸潤両方が陽性の患者は,どちらかが陰性の患者と比較して有意に予後が良好であった.さらにこの2つを組み合わせた因子は多変量解析において有意な予後因子となった. 2.肺癌培養細胞株を用いて低下したHLA class Iの発現をIFNγが回復させうるかどうかをフローサイトメトリーによる表面抗原の解析及びノーザンブロットによるmRNAの解析により検討した. 1)肺癌細胞株であるPC3(腺癌),QG90(小細胞癌)にIFNγを作用させることにより,HLA class Iは蛋白レベルでも,遺伝子レベルでも容易に誘導することが可能であった. 以上より癌免疫応答が成立すためにはHLA発現とリンパ球浸潤の両方が必須であり,この点でIFNγでの賦活は有益と考えられる.現在,遺伝子導入細胞を用いた実験を行っている.
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