研究概要 |
[方法]雑種犬5頭を対象とし、広背筋を有茎で剥離し、電気刺激用ペーシングワイヤー2本を縫着したのち、両心室に反時計回りに巻き付けた。VVIペースメイカ-を埋め込み、2週間のvascular delayをおいた後、続く2-6カ月間,電気刺激トレーニング(rate50ppm)(preconditioning)した。 BC-03電気刺激装置(日本光電)を用いて心拍同期刺激を行ない心補助効果を検討した。 [結果]刺激出力電圧5V,R-delay 10msec,duration 100msecにて行なった。1;Burst刺激30HzでのRV圧は平均18.0%の圧上昇を認め、Ao圧11.5%,LV圧13.0%の圧上昇を認めた。Femoralarteryで測定した血液流量は25%の増加を認めた。 2;Burst刺激50HzでのAo圧、LV圧はそれぞれ18.4%の上昇を認めた。 3;刺激出力電圧を10Vへ増加することによりAo圧、LV圧は、12.2%,14.0%の圧上昇を認めた。 4;モデル心臓は正常心でありかつ頻拍140-180/minであるためか従来言われているほどの十分な心補助効果は見られなかった。実験終了前の、徐脈時において圧低下はあるものの補助率では、むしろ増加する傾向にあった。 [考察]電気刺激トレーニングにてpreconditioningした広背筋を用いて左室補助効果をみた。従来の急性期実験に比べ心補助効果は減少傾向にあった。このことは広背筋のトレーニングが不良であったこと以外に、慢性期実験に伴う様々な問題点、例えば、広背筋と心筋との密着が不十分であったり、使用したペーシングワイヤーが開心術後に用いる体外用で経時的にインピーダンスが上昇したり、広背筋が胸壁に癒着していたりしたことも大きな要因であった。心房補助に関しては、心房細動の作成が困難で今回は得られなかった。
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