雑種成犬4頭の肺を用いてシリコンラバー注入手技の検討をおこなった。左肺摘出に際しては左気管支動脈を温存するために、大動脈と左主気管支および肺門の間の結合組織を損傷しないように左肺と大動脈を一塊として摘出した。注入用のカニューレは内径7mmのものを使い左肺動脈および下行大動脈から大動脈へ挿入した。大動脈からはオレンジ色、肺動脈からは黄色のシリコンラバーをそれぞれ注入した。注入圧は大動脈130cmH20、肺動脈は40cmH20とした。シリコンラバーを末梢まで注入するためには肺を換気する必要があり、左主気管支より気管チューブを挿入し1回換気量約300ml、毎分15回で換気をおこなった。肺動脈よりオレンジ色と黄色のシリコンラバーが流出しはじめたところで注入を中止した。シリコンラバーの重合には約3時間を要し、その時間の後10%ホルマリン液で48時間固定をした。つぎに固定した肺を1cmの厚さの切片として1週間グリセリン液で脱水した。その後実体顕微鏡を用いて観察をおこなった。検討した犬の肺4例に関しては明らかな気管支動脈と肺動脈との吻合所見はみられなかった。
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